成年後見人制度の利用を検討しているものの、「どんな手続きが必要なのか」「何から始めれば良いのか」と戸惑う方は少なくありません。
成年後見制度は、認知症や障がいなどによって判断能力が不十分になった方を法律的に保護し、支援する仕組みです。「法定後見」と「任意後見」の2種類があり、それぞれ手続きの流れや準備すべき書類が異なります。
本記事では、成年後見人の手続きの流れを、法定後見の場合と、任意後見の場合に分け、それぞれ紹介します。
【この記事で分かること】
成年後見人の手続きは、下記の2つに分かれます
認知症などにより判断能力が低下している場合は法定後見、将来に備えてあらかじめ後見人を決めておきたい場合は任意後見が選択されるのが一般的です。
法定後見は家庭裁判所が後見人を選任する制度で、申立てから審判まで一定の期間を要します。任意後見は本人の意思で契約を結ぶ制度ですが、実際に後見を開始するには裁判所の手続きが必要です。
ここでは、それぞれの制度の手続きの流れを、ステップ形式で整理します。
法定後見は、すでに本人の判断能力が低下している場合に、家庭裁判所の関与のもとで成年後見人を選任する制度です。
手続きのおおよその流れは以下のとおりです。
最初の書類準備の段階では、本人の判断能力や財産状況を正確に示す必要があります。不足や記載漏れがあると手続きが長引く原因になります。
また、成年後見は開始して終わりではなく、開始後も定期的な報告や管理が求められる制度です。家庭裁判所への報告義務が継続するため、後見人としての責任を十分に理解しておくことが大切です。
以下では、これらのポイントを踏まえながら、各ステップを詳しく見ていきましょう。
法定後見の申立てでは、本人の判断能力や生活状況、財産内容を客観的に示すため、多くの書類を準備する必要があります。主な必要書類は以下のとおりです。
これらの書類は、家庭裁判所が「後見制度が本当に必要か」「誰を後見人にするのが適切か」を判断する重要な材料です。
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必要書類が揃ったら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書類を提出します。
申立人になれるのは、本人や配偶者、四親等内の親族などに限られています。実情としては、同居家族が申立人となるケースが多いです。
提出時には、申立手数料の収入印紙や郵便切手の納付も必要となりますが、金額や内訳は裁判所ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、必要書類に不足や記載漏れがあると、追加提出や修正を求められ、手続きが長引く原因にもなります。裁判所のホームページなどで必要書類を確認し、抜け漏れのないよう準備しておきましょう。
書類審査が進むと、家庭裁判所の調査官による面談や事情聴取が行われます。
本人の生活状況や判断能力の程度、家族関係、後見人候補者が適切かどうかといった点を確認するプロセスです。必要に応じて本人への面接も行い、後見制度の必要性を総合的に判断します。
説明内容に食い違いがある場合は追加調査が行われることもあるため、正確な情報提供を心がけましょう。
調査・審理を経て、家庭裁判所が成年後見開始の審判を行います。同時に、成年後見人が正式に選任され、その内容は法務局で登記されるのが通常の流れです。
この登記によって、後見人は金融機関や不動産取引などで法的な代理権を証明できるようになります。審判が確定すると、後見人としての職務が正式に開始され、本人の財産管理や身上監護を行う責任を負うことになります。
成年後見が開始されると、成年後見人は本人の預貯金や不動産などの財産内容を整理し、財産目録や収支予定表を作成して家庭裁判所へ提出します。これは、今後の財産管理方針を明確にするための重要な手続きです。
さらに、後見開始後も一定期間ごとに財産状況や後見事務の内容について報告が求められ、家庭裁判所がその内容を確認します。
成年後見は短期で終了するものではなく、裁判所の関与のもとで継続的に管理・監督が行われる点を理解しておくことが大事になります。
任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来に備えて後見人を決めておく制度です。法定後見と異なり、本人の意思を反映できる点が特徴ですが、手続きは「準備段階」と「実際に後見が始まる段階」に分かれています。
なお、任意後見契約を結んだだけでは後見は開始されません。判断能力の低下後に家庭裁判所の手続きを経て初めて効力が生じる点を理解しておきましょう。
まずはじめに、必要書類を揃えます。主な必要書類は次のとおりです。
この段階では、本人の判断能力が十分にあることが前提となるため、意思確認がしっかり行えるうちに準備を進める必要があります。あらかじめ必要な書類を把握しておくことで、後の手続きを落ち着いて進めることができるでしょう。
必要な準備が整ったら、本人と後見人となる予定の人との間で任意後見契約を締結します。
これは任意後見受任者や任意後見の内容を細かく決定する契約であり、公証役場で公正証書として作成することが法律で定められています。公証人が関与することで、本人の意思がきちんと確認され、契約内容が書面として明確に残る仕組みです。
契約では、後見人に任せる内容や範囲、報酬の有無などを具体的に定めます。ここで決めた内容が、将来の後見の基本となるため、慎重に検討しましょう。
本人の判断能力が低下し、任意後見を実際に始める必要が生じた場合には、家庭裁判所へ申立てを行います。この申立てを行えるのは、本人や配偶者、四親等内の親族、または任意後見受任者などです。
申立てが認められると、家庭裁判所によって任意後見監督人が選ばれます。この際、本人の判断能力が低下していることを示すため、医師の診断書の提出が求められます。
任意後見監督人は、後見人の事務内容を確認し、任意後見が適切に行われるようサポートする立場です。
任意後見監督人が選ばれると、任意後見契約の内容にもとづいて後見が始まります。後見人は契約で定められた範囲内で、本人の財産管理や契約に関する支援を行っていきます。
任意後見は、本人の意思を尊重して進められる制度ですが、開始後は一定の報告や確認が行われる仕組みです。こうした流れをあらかじめ理解しておくことで、本人だけでなく家族も落ち着いて対応することができるでしょう。
ここでは、成年後見人の手続きに関する、よくある質問に回答していきます。
成年後見人の手続きは、法律上は家族などが自分で行うことも可能です。実際に、申立書を作成し、必要書類を揃えて家庭裁判所へ提出することで、専門家に依頼せず進めるケースもあります。
ただし、書類の種類が多く、記載内容にも一定の正確さが求められるため、初めての方にとっては負担を感じやすい手続きでもあるでしょう。途中で不備があると追加対応が必要になることもあるため、手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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成年後見人に司法書士が選任されるメリットは?手続きの流れや費用も解説
成年後見人の手続きには、申立て時に必要となる手数料や、戸籍謄本・診断書などの書類取得費用がかかります。
また、成年後見が始まった後は、後見人への報酬が必要になるケースもあるでしょう。さらに、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
費用の総額は状況によって異なるため、事前にどのような費用がかかるのかを把握しておくことが大切です。
費用の目安として、当事務所の料金表は以下のとおりとなります。
| 法定後見申立書作成 | 100,000円~ |
| 任意後見契約書作成 | 200,000円~ |
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成年後見人にかかる費用は?払えない場合やいつまで払うのかについて解説
成年後見人の手続きにかかる期間は、申立てから後見人が決まるまで、数ヶ月程度が目安とされています。
全国の家庭裁判所で終局した成年後見関係事件のうち、約72.0%が2ヶ月以内、約93.8%が4ヶ月以内に終局しているとの統計も公表されています。
もっとも、これはあくまで全体傾向であり、書類の準備状況や家庭裁判所での確認事項の多さによって、個別の案件では期間が前後するのが実情です。書類に不備がある場合や、後見人候補者について追加調査が必要な場合には、想定より時間がかかることもあるため、早めの準備が重要となります。
スムーズに手続きを進めるためには、必要書類を事前にしっかり確認し、漏れのないよう揃えておくことが大切でしょう。
成年後見人の手続きは、必要書類の準備から家庭裁判所への申立て、後見開始後の報告まで、長期にわたって対応が求められます。
流れを理解できていても、書類の不備や判断の行き違いによって手続きが長引くことも少なくありません。また、後見人に選任された後の負担を十分に理解しないまま進めてしまい、想定外の対応が必要になるケースもあるでしょう。
こうした事態を防ぐためには、制度の仕組みを理解したうえで、状況に応じて専門家のサポートを検討することも一つの方法です。
さくらリーガルパートナーでは、成年後見制度だけでなく、信託法や民法、不動産登記などの知識を踏まえ、家族構成や財産状況に応じた相談を行っています。
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