司法書士法人さくらリーガルパートナー

ブログ

家族信託の手続き|流れや注意点をわかりやすく解説

家族信託は、認知症対策や相続対策における、有効な選択肢のひとつです。しかし、具体的な手続きの流れや必要な準備について不安を感じる方も多いでしょう。


本記事では、家族信託の手続きを始める前の準備や、手続きの手順、費用、注意点などについて解説します。


家族信託の手続きを始める前に

家族信託の手続きを開始する前には、以下のような検討と準備が必要です。

  • 家族信託がベストな選択か確認する
  • 信託財産の選定と資産の把握
  • 必要書類を準備する

これらの準備を怠ると、手続きが長期化したり、思わぬトラブルが発生したりする可能性もあるため、慎重に進めることが重要です。

家族信託がベストな選択か確認する

家族信託を設立する前に、本当にこの制度が最適な選択肢なのかを慎重に検討する必要があります。


家族信託が特に有効とされるのは、認知症対策や相続対策、事業承継、障がいを持つ家族の将来の生活保障などの場面です。


一方で、信頼できる受託者がいないケースや、家族間の関係性が不安定な場合には適さない可能性もあります。

まずは、家族信託を選択することで何を実現したいのか、他の制度(遺言や成年後見など)との違いや補完関係を整理することが大切です。

信託財産の選定と資産の把握

信託財産とは、その名の通り信託の対象になる財産のことです。族信託の手続きを進める前に、どの財産を信託財産にするのか選定する必要があります


信託財産にできるものの具体例としては以下が挙げられます。

  • 現金
  • 不動産
  • 有価証券
  • 金銭債権
  • 知的財産
  • その他(宝石、美術品、車、ペットなど)

信託には委託者・受託者・受益者などの役割があるため、それぞれを誰にするのか慎重に検討する必要があります。受託者は信託財産を管理する責任を負うため、信頼性・管理能力が重要な要素となります。


受益者と受託者が同一人物になる場合の注意点や、第三者(信託監督人など)の設置の是非についても十分に検討しましょう。万一の変更や追加ができるかどうかも設計段階で検討しておくと安心です。

必要書類を準備する

家族信託の手続きを進める際には複数の書類を準備する必要があります。主な書類は以下のとおりです。

  • 本人確認書類
  • 委託者および受託者の印鑑証明書
  • 委託者および受託者の実印
  •  信託財産に関する資料
  • 登記事項証明書(信託財産に不動産を含む場合)

信託契約書の作成時には信託財産の詳細を記載するための資料や、家族構成を確認するために戸籍謄本や住民票なども必要となります。


不動産が信託財産に含まれる場合には固定資産評価証明書や登記済証も必要です。

さくらリーガルパートナーでは、「必要書類の揃え方がわからない」「何から手を付ければ良いかわからない」といった場合のご相談も承っています。


家族信託に関するお悩みはさくらリーガルパートナーまでお問い合わせください。

LINEでもお気軽にお問い合わせください

LINEでのご予約はこちらから

家族信託における手続きの流れ

家族信託における、手続きの基本的な流れは以下のとおりです。

  1. ヒアリングにより内容を明確にする
  2. 契約書案文作成
  3. 公正証書作成
  4. 不動産を信託する場合は信託登記を行う
  5. 信託財産の運用を開始する

各ステップについて、詳しく見ていきましょう。

1.ヒアリングにより内容を明確にする

まずはヒアリングによって、家族信託の目的や信託財産などを明確にします。信託契約の当事者のみでなく、他の家族にもヒアリングすることによって、不満や揉め事の発生といったトラブルを防ぐことができます。


また、専門家に依頼すれば、ヒアリングの段階からこうしたトラブルに関する指摘や、家族ごとの複雑な事情を踏まえたうえで、安全に手続きを行うことが可能です。

2.契約書案文作成

ヒアリングの内容をもとに家族信託契約書を作成します。契約書の内容を具体的に記載することで、誤解や本来の意図とは異なった解釈になることが無いようにすることが大切です。


家族信託の内容や信託財産、受託者の権限などの、重要な事項を明確に記載する必要があります。契約書の作成は家族信託の成功に直結するものであるため、契約内容に関する疑問点や不安は、この段階で解消することが重要です。かかる期間の目安は、ヒアリングから契約書案文作成まで最短で1ヶ月程度となります。

3.公正証書作成

信託契約書を作成したら、公正証書を作成します。公正証書を作成することで、契約書の原本が公証役場に保管されるため紛失などのリスクを低減できるほか、私文書よりも高い証明力を持たせることができます


また、公正証書作成時に公証人による当事者の意思確認が行われるため、契約締結後の相続人間の紛争の予防につながります。公正証書作成にかかる期間の目安は、最短で1ヶ月程度です。

4.不動産を信託する場合は信託登記を行う

家族信託において不動産が信託財産に含まれる場合、信託登記が必要となります。信託登記とは、不動産の所有権を受託者に移転し、登記簿上に信託の内容を記載する手続きです。

これによって受託者が不動産を管理・処分する権限を有することを公示できます。信託登記を行うことで、不動産の管理や処分がスムーズに行え、円滑な家族信託が実現可能です。


契約や登記の完了にかかる期間の目安は、公正証書作成から最短1ヶ月程度です。ヒアリングから最短で3ヶ月程度で家族信託の手続きが完了しますが、基本的にはもっとかかるものと思って良いでしょう。余裕を持って手続きを進めてください。

5.信託財産の運用を開始する

家族信託は契約や登記で終わりではなく、受託者が信託財産の運用・管理を継続的に行うことが重要です。運用とは、不動産の管理や収益の分配、金融資産の取引などを指します。


受託者には「善管注意義務(信託法29条)」や「忠実義務(信託法30条)」などの法的責任が課されており、信託目的に従って運用を行わなければなりません。信託財産の管理状況は、必要に応じて受益者に報告する義務があり、透明性のある運用が求められます。

信託開始後も、継続的に専門家のアドバイスを受けながら適切な管理を続けることが、家族信託の成功には欠かせません

家族信託の手続きに必要な費用

家族信託の手続きにかかる費用は、自分で手続きを行うのか、専門家に依頼するのかによって大きく異なります。また、信託財産の規模や内容によっても費用は変動するため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

ここでは、自分で行う場合の費用と、専門家に依頼する場合の費用について、それぞれ見ていきましょう。

自分で行う場合

家族信託の手続きを専門家へ依頼せずに行う場合、官公庁が発行する証明書の購入費用や公正証書費用、信託口口座開設費用、登録免許税などの費用がかかります


戸籍謄本などの書類は各市町村の窓口で500円程度で購入可能です。

公正証書費用は信託財産の内容によって変動し、登録免許税は固定資産税評価額の0.3%から0.4%かかります。

専門家に依頼する場合

専門家へ依頼した場合、書類の準備費用や公正証書費用などに加え、相談料や着手金、成功報酬の支払いが必要となります。自分で手続きを行う場合よりも費用は高額となりますが、複雑な家族信託の手続きを正確かつ安全に行えることを踏まえると専門家への依頼がおすすめです。


費用の目安として、当事務所の料金表は以下のとおりです。


信託財産が1億円以下 1%(3,000万円以下の場合は、最低額30万円)
信託財産が一億円を超え3億円以下 信託財産の0.5%+50万円
信託財産が3億円を超え5億円以下 信託財産の0.3%+110万円
信託財産が5億円を超え10億円以下 信託財産の0.2%+160万円
10億円超え 信託財産の0.1%+260万円

参考:料金表 | 静岡市の司法書士事務所なら

家族信託の手続きにおける注意点

家族信託の手続きを成功させるためには、いくつかの重要な注意点を押さえる必要があります。

  • 家族で十分に話し合う
  • 30年ルールに注意する
  • 委託者の判断能力が必要

これらの注意点を見落とすと、せっかく設立した家族信託が機能しなかったり、後にトラブルの原因となったりする可能性があります。

家族で十分に話し合う

家族信託を実施する際には、家族全員で十分な話し合いを行い、信託の目的や内容について共通の理解を持つことが重要です。話し合いが不十分な場合、後に誤解や不満が生じ、家族間のトラブルの原因となることがあります。また、信託契約の内容が家族の意向と一致していない場合、契約の見直しや修正が必要となる可能性もあります。

30年ルールに注意する

家族信託には「信託法上の30年ルール」があり、長期の信託契約には制限があります。特に、受益者が次々と変わる「受益者連続型信託」の場合は、この30年ルールに引っかかるリスクがあります。


30年を超える信託契約を設定すると、契約の一部が無効になる恐れがあるため注意が必要です。信託期間や内容が法律に適合しているかどうか、専門家のチェックを受けることが重要です。

委託者の判断能力が必要

委託者が認知症などによって判断能力を失っている場合、家族信託の契約を締結できません。その場合、家族信託以外の選択肢として成年後見制度の活用も視野に入れると良いでしょう。


成年後見制度とは、判断能力が不十分な人の代わりに、財産管理や契約などの法律行為を行い支援する制度です。

制度の選択にあたっては、家族の状況や財産の内容、将来的な希望を踏まえ、専門家と相談しながら最適な方法を検討することが重要です。


成年後見制度 | 静岡市の司法書士事務所なら

家族信託の手続きをスムーズに進めるためのポイント

家族信託の手続きは多岐にわたり、法的・税務的な知識が必要となるため、スムーズに進めるには専門家の支援が不可欠です。契約書の文案作成や公正証書化、信託登記といった各段階では、書類の正確性や法的要件の確認が求められます。


専門家に依頼することで、委託者や受託者の意向を的確に反映した信託設計が可能となり、将来的なトラブルの回避にもつながります。司法書士・弁護士・税理士などの専門家は、それぞれの専門領域でのリスクを洗い出し、最適なサポートを行うことができます。

関連記事

家族信託は司法書士に頼むべき?依頼の流れと費用、選び方まで解説

まとめ

家族信託の手続きは契約書作成や登記など専門知識が求められ、正確な準備と適切な判断が重要な要素となります。成功させるためには、家族間での十分な話し合いと、将来を見据えた設計が欠かせません。トラブルを防ぎ円滑に進めるためには、司法書士などの専門家に相談することが望ましいでしょう。


さくらリーガルパートナーでは、「信託法」「成年後見制度」「民法(遺言や遺留分等)」「不動産登記」等の専門知識を駆使した相続や資産管理のアドバイスが可能です。

家族信託に関するお悩みはさくらリーガルパートナーまでお問い合わせください。



家族信託に関するお悩みはさくらリーガルパートナーまでお問い合わせください。

LINEでもお気軽にお問い合わせください

LINEでのご予約はこちらから

お問い合わせ Contact

お電話でのお問い合わせ

[受付時間]9:00〜18:00 土日祝を除く
 054-283-4750

面談予約(24時間受付)

公式LINEからいつでもご予約可能です。
  1. ホーム
  2. ブログ
  3. 家族信託の手続き|流れや注意点をわかりやすく解説